生まれて初めて、母が、私の好きな歌を知ろうと聞いてきた。それは、初めての事だった。私は、CDを取りに行く動作をした。そう、人は、相手が変わると、自分もつい動いてしまうのだ。初めて、少し嬉しかった。子供が好きなものに、興味を抱かない人だからだ。自分が好きなものだけを見るタイプだからだ。
私は、待っている。絶壁で今にも落ちそうになりながらも、相手が手を差し伸べるのを。しかし、また、私も困ってしまう。相手が、変わってしまうと、私が死ぬ意味がなくなるからだ。 決死の作戦だ。研究のおかげで、私は、死ぬのが怖くなくなった。無意識の器に近づくと、もう一体化して、生きているのか死んでいるのか、わからないからだ。